映画『ペレ 伝説の誕生』

 

「ペレ 伝説の誕生」

 

 

 

偉人のサクセスストーリーほど、映画と相性のいい題材はないだろう。しかも、オリンピックがまもなく開催されるブラジルが生んだサッカーの神様、ペレ原点を描く物語であればなおさらだ。

 

 

 

1950年、優勝確実と言われた自国開催のFIFAワールドカップ(W杯)で優勝を逃したブラジル代表。スラムで育ち、のちにペレと呼ばれるようになる少年ナシメント(レオナルド・リマ・カルヴァーリョ)は、自らの力でブラジルをW杯優勝に導くことを誓う。そして58年のW杯スウェーデン大会。プロチーム入団からわずか18カ月、17歳のペレは、当時史上最年少でW杯出場を果たした。

 

 

 

ペレは父から『自分を信じろ』と言い続けられ、次に『自分を信じさせろ』と言われた時、チームである行動を起こす。この言葉と行動があったからこそ、神様が誕生したのだろう。ペレの偉業をたたえるが、ベースには当時のブラジルが抱えていた大きな葛藤の構図がある。欧州人のようにならなければ文化人ではないと、もがく監督や選手達。対してペレと父親は、16世紀から続く『ジンガ』というブラジルのプレースタイルを繋いでいくことこそが、繁栄への道だと信じる。

 

 

 

麻薬、腐敗した警察、貧困など、リオデジャネイロのスラム街を描いたドキュメンタリー映画「ファヴェーラの丘」のジェフ・ジンバリストと、マイケル・ジンバリストの兄弟が監督・脚本を担当。ペレの生きざまを借りて、ブラジル人のアイデンティティーを描いた。「ムトゥ・踊るマハラジャ」の音楽を担当したAR・ラフマーンの音楽が扇情的で感情をかき立てる。ペレ本人も出演しているのも楽しい。

 

 

 

78日から公開

 

1時間53

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2016年7月15日

神戸新聞夕刊「銀幕かわらばん」掲載

無断での転載はご遠慮ください。