『ディーパンの闘い』

 

『ディーパンの闘い』

 

 

 

欧州で起きている移民問題。日本にいる我々も無関心ではいられない。本作は、スリランカからフランスへ逃れた偽装家族を通して、人種・宗教・暴力・移民問題に揺れる今の欧州を浮き彫りにする。

 

内戦で妻子が殺された兵士ディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)。内戦下のスリランカを逃れるための手続きをしていると赤の他人の女性ヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)が親を亡くした子供を連れてやってくる。3人は家族を装うことで、難民審査を通り抜ける。ようやくフランスで団地の管理人の職を得たディーパンは、3人でパリ郊外の集合団地に住み、互いの距離を縮めていく。しかし、団地には密売組織が巣くい、新たな暴力に巻き込まれていく。

 

ディーパンを演じるジェスターサンは、スリランカ内戦の元兵士で、亡命後、作家として活躍している人物だ。だからこそ本物の緊迫感が漂う。しかし物語では、何故、ディーパンが、反政府軍として戦っていたのかは明らかにされない。挟みこまれるのは、ジャングルの中で大きな身体を揺らす象の姿だ。この象が意味するものは何であるのか。本作でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した、フランスを代表する監督ジャック・オディアールは、一切の説明を省き、次に何が起こるかわかない緊張感を漂わせながら、美意識の高い映像で偽装家族を追いかける。後半、ディーパンは、再び銃を手にするが、それは、国の大義のためではなく妻子のためだ。偽装家族から真の家族になっていく幸せ。そんな場面があるからこそ、観客と移民問題の距離が縮まる。

 

 

 

2月12日から公開中

 

1時間55分。

 

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神戸新聞2016年2月19日付け夕刊

「銀幕かわらばん」掲載

神戸新聞より転載許諾済み

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