映画「はなちゃんのみそ汁」

 

「はなちゃんのみそ汁」

 

 

 

 

 

古くは吉永小百合主演の「愛と死をみつめて」、近年の長澤まさみ主演「世界の中心で愛を叫ぶ」などは病による別離の苦悩を描写した「難病もの」と言われるジャンルである。主人公に肉体的な死は訪れるが、精神的な愛は永遠に継続すると終止符を打つ。このジャンルに人気があるのは「永遠」に感動するからだ。本作も事実を基にした「難病もの」。しかし「ペコロスの母に会いに行く」で脚本を担当し,今回が監督デビューとなった阿久根知昭は、涙より、ほのぼのする笑いに満ちた家族愛を紡いだ。

 

 

 

新聞記者の信吾(滝藤賢一)と、音大生だった千恵(広末涼子)。結婚を考え始めた矢先、千恵は乳がんを宣告されるが、2人は結婚し、千恵は左乳房を摘出する。程なく千恵は妊娠。子供を産むと再発の可能性が高くなるとされ、千恵は悩んだ末に、長女・はなを出産した。

 

 

 

千恵は代替療法から「生きることは食べること」を学び、小さなはなに、みそ汁の作り方を教える。それは楽しく料理を教えるというより、千恵の覚悟がこもった緊張感が漂う場面だった。彼女は、がんになったが結婚を決め、再発の危険を承知で出産することも自分で決めた。もちろん家族の支えもあったが、最後は千恵自身が決断した。「自分の人生の責任は自分で持つ」という強い思い。千恵は大事な娘に、みそ汁の作り方を通して、人生の創り方を伝えようとしていた。「難病もの」だが、人生を肯定する内容を大いに含み、鑑賞後に幸福な思いが残るのは、はなを演じた赤松えみなの素朴さによるところも大きい。千恵が何度もつぶやく「私はついている」という言葉の使い方も絶妙だった。

 

 

 

19日公開

 

1時間58

 

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神戸新聞2016年1月15日夕刊「銀幕かわらばん」掲載

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