映画「起終点駅 ターミナル」

 

「起終点駅 ターミナル」

 

 

 

人生の終わりへと向かっていたはずの男女が出会い、孤独を分かち合い再生していく。かつて、降旗康男監督と高倉健コンビで作られた「駅 STATION」や「ホタル」などで描かれたような、日本映画のよさをしみじみと感じさせてくれる篠原哲雄監督作品である。

 

 

北海道で、裁判官をする鷲田完治(佐藤浩市)の前に、学生時代の恋人・冴子(尾野真千子)が被告人として現れる。再び、冴子と親密な仲になった完治は、このまま東京の妻子の元には帰らず北海道にとどまる決心をしていた。しかしその矢先、冴子を失う。ほぼ台詞が無く2人の表情の切り返しだけで展開するこの場面は、降り注ぐ白い雪に覆われた駅のホ-ムが心象風景となり、役者の演技のうまさが相まって「何かが起こるのでは…」と観客にいい緊張を持たせ、映画鑑賞の喜びを与えてくれる。

 

その後25年間、完治は贖罪の思いから、国選弁護人として釧路でひっそりと暮らしていたが、弁護を担当した椎名敦子(本田翼)が完治の家へやって来る。

 

一人暮らしをしている完治は料理が得意だ。仕事帰りに市場で買い物をして、手際よくザンギ(唐揚げ)を揚げる姿は、世捨て人のような生活を送りながらも、生活に小さな彩りがあることを示唆していて、ほっとさせられる。

 

陳腐な台詞などで説明せず、完治の隣に住む痴呆老人やその息子、纏わりつく地元の暴力団組織の組長(中村獅堂)などを巧みに絡ませながら、北海道の豊かな食材や自然を織り込むことで、登場人物たちの背景や人生の機微を綴っていく。新たな人との関わりが、終わりだと思っていた場所を始まりの地にさせる。桜木紫乃の短編小説の映画化。

 

 

 

117日から公開

 

1時間49分。

 

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2015年11月13日(金)神戸新聞夕刊 「銀幕かわらばん」掲載

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