映画「ヒトラー暗殺、13分の誤算」







(C)Bernd Schuller


「ヒトラー暗殺、13分の誤算」


歴史に埋もれていた人物が画面に登場する作品は、鑑賞の楽しみを増す。しかも、ドイツ政府が長年に渡って封印してきた、ヒトラー暗殺未遂事件の犯人についてとなるとなおさらだ。

ヒトラー暗殺計画は、40件以上実行されたという。その中で本作は、訓練されたスパイでも、反ナチ運動家でもない、一般市民が単独で起こした実話が基となっている。


1939年、ミュンヘンで演説を行っていたヒトラーは、いつもより早く切り上げた。その直後、会場で時限爆弾が爆発。ヒトラーが退席から、わずか13分後だった。計画は緻密かつ大胆、時限装置付の爆弾は精密かつ確実。ゲシュタポは英国の諜報員の仕業だと睨むが、逮捕されたのは、ゲオルク・エルザー(クリスティアン・フリーデル)。彼は、昼間は湖で泳ぎ、時計や家具つくりで生計を立て、音楽と自由を愛する田舎の男性だった。


1930年代初頭、全体主義の空気がじわじわ広がる中で、市民が思考停止になる怖さ。子供達が興じるカードゲームの絵柄は戦闘機だ。村の入り口に突然「ユダヤ人お断り」と言う看板が掲げられ、恋人がユダヤ人だと知れた女性はののしられ、村八分にされる。また、毎年の収穫祭が、ナチスをたたえる映画の上映会に変わっていく。

物語は、巧みなナチの宣伝によって、ファシズムが伝統的な村社会にするりと入っていく様子と、それを「危険だ」と感じるエルザーの研ぎ澄まされた感覚を対比することで、彼が、いかにして事件を起こしたのかを再現していく。ドイツの小さな村の美しい湖水の景色が、いつまでも残像になる。


10月24日より公開

1時間56

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2015年10月23日付け

神戸新聞夕刊「銀幕かわらばん」掲載
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