映画「ボーイ・ソプラノ」


「ボーイ・ソプラノただひとつの歌声」

 




全ては流れていく…。主人公の「ボーイソプラノ」にも声変わりがやってくるし、優秀な指導者でも引退の時期は来る。しかし、限られた時間だからこそ輝くものがある。

本作は、一人の少年が合唱団で指導者と出会い歌う喜びを知ることで大人へと成長していく物語。

 

複雑な家庭環境に育った少年ステット(ギャレット・ウェアリング)は、たぐいまれなる美声の持ち主。そんな彼が、名門少年合唱団へ入学する。しかし、他の生徒とトラブルばかり…。少年たちの育成を任されているのは、厳しい指導で知られているカーヴェル(ダスティン・ホフマン)だった。彼は才能がありながらも無駄にしているステットに対して、特に厳しい指導をする。

 

米アカデミー賞作曲賞に輝いた「レッド・バイオリン」(1998年)でも、音楽にこだわって演出をしたカナダのフランソワ・ジラール監督は、今回も日本の「ほたるこい」など数々の合唱曲を挿入。練習や、コンサートでの歌声を聞くだけでも価値がある。

子供の心の移り変わりを丁寧に拾い上げ、それによって大人たちの心も変化していく様子を挟む。合唱団の資金繰りや他の合唱団との競争など、現実的な側面も描かれることで重層的な物語となっている。まるで重なり合うボーイ・ソプラノの歌声のようだ。ラストでステットに「なぜ、あんなに苦しい練習をしたの?」と聞かれたカーベルは「結果ではなく、その学びに意味がある」と答える。ステットには常にライバルがいた。そこに嫉妬や勝負心が生まれ、競い合うことで知らぬ間に自身の技術と精神がたくましく伸びていた。その間に培う「学び」こそが人生の深さを作るのである。

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神戸新聞 9月11日付け夕刊「びびっとシネマ」掲載

神戸新聞より、転載許可あり。

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911日公開

1時間43