海街ダイアリー

「海街ダイアリー」

 



とにかく4姉妹を演じる豪華キャストが注目されています。綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、夏帆さん、そして「Seventeen」の雑誌モデルでもある広瀬すずさん。しかも、その4人を采配するのが「そして父になる」でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した是枝裕和監督なのですから、さらに興味が湧くところです。

 


舞台は鎌倉。昭和の香り漂う縁側のある一軒家で暮らす長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)の香田家3姉妹のもとに、15年前に家を出ていった父の訃報が届きます。葬儀に出席した3人は、そこで異母妹となる14歳の少女すず(広瀬すず)と対面。父が亡くなり身寄りのいなくなってしまったすずに、長女の幸は鎌倉で一緒に暮らそうと提案をします。そしてすずは、香田家の四女として、新たな生活を始めることに…。

 

是枝監督作品の中でよく描かれるのは「血縁」についてです。カンヌ国際映画祭で柳楽優弥さんが主演男優賞を受賞した「誰も知らない」では、血が繋がっている子供達をきちんと育てられない母が登場します。福山雅治さん主演の「そして父になる」では、自分の息子が、病院のミスで赤ちゃんの時に取り違えられていたという設定です。さらに監督が血縁を意識していると思うのは、福山雅治さん演じる良多(りょうた)の息子の名前は慶多、良多の父の名前は良輔。それぞれ一字ずつ受け継がれています。

余談ですが、是枝監督の「歩いても歩いても」やテレビドラマの「ゴーイングマイホーム」でも、両作品で阿部寛さん演じる役の名前は良多でした。この「良多」は、監督の実在する後輩の名前らしく、「名の通り良いことが多くおきる、良い奴だから使わせてもらっている」と発言していました。

日本映画黄金期を支えた小津安二郎は、原節子に「紀子」という女性を3回、笠智衆にも「周吉」とう名の役を5回も演じさせています。今作では「良多」は登場しませんが、鎌倉が舞台であったり、家に縁側があったり、美味しい家庭料理が次々出てきたり(三女の千佳がいつも美味しそうに食べるのが楽しい)、家族の物語であったり…。小津調を思わせる部分が多く重なるのは偶然なのでしょうか?

細かい箇所で「血縁」へのこだわりを見せながら、常に描かれるのは家族の危うさです。今作も、母が違う妹が加わる姉妹の話ですが、そこに母(大竹しのぶ)や伯母(樹木希林)が絡み、長女と母の対立や、家族だからこそ感じる複雑な気持ちや苛立ちなどが描かれます。

4姉妹の可愛さに加え、彼女達の深層心理を一緒に探求できる作品です。また四季折々の自然の美しさや海からの潮風、食の豊かさまでもが、彼女達の住んでいる家の縁側から感じられる日本情緒溢れる作品でもあるのです。

613日公開 126